ノアアニマルクリニック 院長の前谷です。
病気になった際に、病院で処方される療法食。
色んなメーカーから様々な商品が出てますが、細かな違いがあったり、実は性能の差があったりもするので、使うフードによって成果は変わってくるんですよね。
そこで、フードを変更したらこんなに変わるんだぞ!という記事を今日は書きたいと思います。
以前に膀胱結石が見つかり、ロイヤルカナンの療法食「ユリナリーS/O」シリーズのご飯をきちんと真面目に食べてきたワンちゃんが来院されました。
私が診察した際には、体重はやや太り気味でした。(健康体重より約10%重たいくらいですが)
エコー検査では、膀胱内に約6mmの結石が1つ見つかりました。
ついでに他の臓器も見ていったところ、胆のうに胆泥(たんでい:消化酵素である胆汁が何らかの要因でドロドロになって胆のうの中に溜まってしまう)が溜まってきてました。
胆泥症(たんでいしょう)というのは原因が複雑で、例えば甲状腺の病気などのホルモン疾患を隠し持ってたり、高脂血症(コレステロールや中性脂肪などが高い)があると起きやすいことが知られています。
そのため、詳しく血液検査を行ったところ、甲状腺ホルモンは正常。超音波検査での副腎の大きさや血液検査パラメータで他のホルモンの病気も大丈夫そうでしたが、重度の高脂血症が見つかりました。
・総コレステロール T-Chol: 540 mg/dL ↑ (正常値は115~337)
・中性脂肪 TG: >1000 mg/dL↑↑ (正常値は23~149)
そこでオススメなのが、タイトル画像に載せてました、同じロイヤルカナン「ユリナリーS/O」シリーズの中でも、こちらのフードです!
この『ユリナリーS/O+満腹感サポート』は、尿路結石用のフードなのですが、体重減量も併せて行う+αの製品です。
こちらのフードに変更してもらい、3ヶ月後には重たかった10%分の減量に成功し、とても健康的な体型になって来院されました。
その時の血液検査の結果が以下の通りです。
・総コレステロール T-Chol : 297 mg/dL ↓(正常値は115~337)
・中性脂肪 TG : 100 mg/dL ↓↓(正常値は23~149)
なんと!ひどかった高脂血症がすっかり改善してました。
おそらくこのワンちゃんの膀胱結石は、ユリナリーS/Oを食べててもずっと残ってるので、療法食で溶けないタイプのとても厄介な「シュウ酸カルシウム」結石だと思われます。
実はシュウ酸カルシウム結石は、中性脂肪の数値が上がれば上がるほどリスクが高くなることがデータでも証明されていて、せっかく尿路結石用フードを食べてても、中性脂肪が高いこと自体が結石のリスクにつながってた可能性があったのですから、いかにフード選びが大切かというお話でした。
それにこのフードは、実は販売当初は「pHコントロールV2+満腹感サポート」という名前でした。
V2という名前がついた商品は当時2種類しかなく、他のロイヤルカナンの尿路結石用フードよりシュウ酸カルシウム結石の予防効果が高いものとして位置づけられておりました。
実際私も、シュウ酸カルシウム結石を手術で摘出したワンちゃんには、術後にこのフードを推奨しておりますが、すぐに再発することの多いシュウ酸カルシウム結石の再発がとても少ないと思います。
また、胆泥症の原因にも「高脂血症」は大いに関係してますので、今後胆泥症の改善も見込めるのではないかと期待しますが、胆泥症はなかなかフードやお薬では改善しない病気なので、少なくともこのフードで負担をかけない食生活を続けていくべきですね。
このように、同じロイヤルカナンの尿路結石用フードの種類を変更したケースですが、長い目で見ると今後起こりうる様々な病気やリスクを事前に回避できた可能性があります。
療法食を食べているから大丈夫。。。ではなく、体全体の評価やその子の体質なども含めて療法食って選ばないといけないんですよね。というお話でした。
愛犬愛猫の体調のことでご心配なことがあれば一度ご相談くださいね。
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